第六十五章

最後のページの右下には、うっすらとした油の跡があった。一般人には見えないかもしれないが、紙が長年保存される過程で、人間の皮脂が酸化して残留したものだ。

葵は携帯用ブラックライトを取り出した。

紋様が浮かび上がる。指紋だった。

春が声を潜める。「悠なら、誰の指紋か照合できるかな」

「高画質で撮って」

春はマクロレンズで撮影し、悠に送信した。

和也は彼女の手慣れた証拠採取の様子を見つめ、ふと口を開いた。「いつから、こんなことを自分でやるのが当たり前になったんだ?」

葵は顔を上げない。「誰も私の代わりにやってくれないと気づいた時からよ」

和也は口を閉ざした。

悠からの返信は予想以...

ログインして続きを読む